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1-1)2015/5 東芝の粉飾決算と工事進行基準

2016/2/14追記その後の東芝問題は目をむくような展開になってしまいました。旧経営トップが表面的な経営数字を取り繕うために、多分当たり前の感覚(その瞬間は悪意はなかったでしょう。判断能力マヒ!)で数字づくりしたことが明らかになってしまいました。
私がこの記事で指摘したようなレベルの話ではなく、とんでもない基本レベルの問題があったわけです。その時悪意はなくても、マヒした感覚で明らかな悪事をすることは、リーダの資格とか倫理観といったことで議論する問題では片付かないでしょう。
こういうことが、日本の名門企業で平気でまかり通ていた事実は、人間の弱さよりも、大企業の体質、価値観、組織力などに大きな問題を孕んでいることを示しています。単に東芝の歴代の経営トップの人間性や資質の問題もありますが、企業、組織の問題の方が極めて大きいのです。もちろん、企業の組織を作り、文化を作るのは人間ですから、最終的にはヒトの問題ですが、特定の1個人だけでなく、引き継いでいく人間の連鎖で修正できないことが問題なのでしょう。

そうみると、東芝だけの問題ではなく、他の多くの大企業、さらに役所、政治家など、昨日の続きで永らえている組織はすべて、同様の構造問題を抱えていると思うべきです。戦後70年になろうとする今、膨大なエントロピーが蓄積してきているのです。どこかで、ガラガラポンが必要になっているのでしょう。(井野)

2015/8/1 追記その後の報道によれば、東芝の3代にわたる社長が、不適切会計、ありていにいえば粉飾決算を実質指示したといった方向に進んでいます。先に述べたEVM議論などの外枠で、論外の悪魔のささやきに乗った意図をもって操作をしたということです。
社外役員などのけん制機能も有効に働かなかったという、もうあきれるばかりのひどさに陥っています。けん制機能が有効に働くためには、結果数字をボーと眺めていても、何も見えてこないはずです。数字を積み上げてくるプロセスをきちんと見て、仕組み上の不正防止に目を見張る必要があります。売上計上基準とか、その基準の根拠、基準の順守などです。そういう視点で見るなら、先の議論のEVMなどの方法論の有効性(客観性)が理解できるはずです。
そもそも、日本企業のムラ社会の外からならだれでもいい、カッコウのつく学者や役人上がり等を連れてくることが多いようです。そのやり方、論理そのものがムラ社会を守り、外向けには格好をつけるという、素人だましのあざとさとしか言いようがないのです。東芝に限らず、日本の多くの企業は、まだまだこの素人だましのレベルでさまよっているのではないでしょうか。結果、東芝のことを他山の石とばかり言えない企業は多いのではないでしょうか。追記終わり(井野)

2015年5月時点でまだ、東芝をめぐる不適切会計で決算できない異常状態が続いています。日経新聞電子版記事によれば次の通り(青字)、内部通報で発覚したようです。(2015/8/1 文末に追記しました。)

東芝は22日、不適切会計問題で第三者委員会が調査する範囲を発表した。すでに500億円の利益減額見込みを公表しているインフラ関連に加えて、テレビやパソコン、半導体という主力事業の大半が対象になる。仮に、利益の大半を稼ぐ屋台骨の半導体で問題が出てくれば、業績への影響は一気に膨らみかねない。全社的な管理体制のずさんさが浮き彫りになった形で、経営陣の責任問題に発展する可能性もある。
証券取引等監視委員会に届いた内部通報がきっかけで発覚した不適切会計を発表したのは4月3日。約1カ月半たって外部の専門家による本格調査がようやく始まるが、期間は示さなかった。「範囲が広がり、場合によっては深刻な事態に発展するかもしれない」と金融庁幹部は身構える。

この不適切会計処理は、進行基準の意図的な悪用で行われたといわれています。
プロジェクトマネジメントの世界では、会計処理の根拠となる売上計上処理方式として、この工事進行基準と工事完成基準の二つが昔からあります。これは、元々建設業などでも昔からある課題です。プロジェクトマネジメントでは、米国の国防省やNASAなどで研究されたEVM(Earned Value Management)、つまり進行基準の根拠となる達成価値の評価を客観的にすることを前提に進行基準を可能としています。元々、進行基準は恣意性のリスクの高い方法であり、今回の東芝の手法はこれを意図を持って悪用したということで指弾されているのでしょう。悪意はなくても、つい手を出しやすい方式であるともいえます。客観性の確保が難しいのです。

プロジェクトの世界では、ひとつのプロジェクトが年度をまたがることは日常茶飯事で、その数年にわたるプロジェクトの完成までの途中期間で中間的に売上会計処理することは必要なことであり、完全な完成基準での会計処理では対応しきれない面があります。進行基準で処理せざるを得ないのです。重要なことは工事進行基準で会計処理するためには合理的で客観性のあるエビデンスを必須としなければならないことです。そして、それは、現時点ではEVMしかないといえます。
プロジェクトマネジメントの世界でも、EVMをやらないとかごまかしのEVMをやっているケースが相当多いのではないでしょうか。完成度の高いEVMを実施するためには、計画の段階での作業分解 (WBS: Work Breakdown Structure) を精度よく行うことが必要になります。プロジェクトは計画段階での徹底的な見切りを行うことなのです。実はこれができていないことが、プロジェクトの成功確率が30%程度で、一向に向上しない原因でもあるのですが・・・・。適切な会計処理とプロジェクトの成功は、実は計画重視の方法を徹底することなのです。
プロジェクトマネジメントの分野でも、今回の東芝の会計処理の事件を見て、大いに足元のあやふやさ、危うさを感じ、足固めすべきです。それは、徹底的に正しいEVMを採用・徹底するということなのです。更に言えば、そのための前提条件になる、WBSの品質、精度を計画段階で徹底的に高めることを意味します。PMO (Project Management Office) がWBS課題を追求し、EVMについて会計部門と徹底議論して、進めるべき課題ではないでしょうか?PMOは、表面的な個別のプロジェクトを適正に実行させるだけでなく、プロジェクトを実行するためのインフラ、プロセス標準などを徹底的に磨き上げることが最も重要な任務であるはずです。(井野)

 

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