私が主張している、「人間関係は資産である」ということに関連して、ひとつだけことばの使い方を整理する。表題の「人脈」と「人間関係資産」の違いについてである。実は、このテーマはすでに著書「人間関係資産論」の中で述べている。よって、その抜粋を微修正して以下に掲載する。ですます体は抜粋のため。
(人間関係資産は人脈と同じなのか? 人的資産との違いは?)
本書(人間関係資産論のこと)を読んできて、「要は人間関係資産とは人脈のことなのか?」と感じる人は多いかもしれません。昔から使われてきた人脈のことを人間関係資産と言い直しただけなのでしょうか?そう、考え方はほぼ同じといっても間違いではありません。
違いは人間関係資産と呼ぶことによって、資産価値を意識し、できるだけ科学的な方法を使ってマネージ(管理)する取り組みをするということです。何となく漠然とした受け身のとらえ方でなく、見える化し、定量把握できるようにし、積極活用するという意識が大きな違いです。
そういう意味では、近代産業を支えてきた「効率化」、「合理性」といった価値観、視点でとらえているといえます。もちろん、私はなんでも効率を追求することはいかがなものか、という最近の風潮も理解しています。しかし、今までの人間関係こそ、あえて効率化、合理化する態度で踏み込むべき領域ではないかと問題提起したいのです。
なぜなら、やる気と工夫次第であらゆる人が可能性を持っているのが、資産としての人間関係だからです。誰にでも現実的な可能性を秘めていることが重要なのです。
目をつぶって大きな視点で見ると、人間関係資産と人脈は同じようなものに見えます。その上で資産として意識して、個人の持つ資源、資産として活用し、蓄積し活用することを喚起しているのです。生きていく中で何となく無意識に構築される人脈にくらべ、あなたの意思を持って効率的に構築、活用するのが人間関係資産なのです。しっかり意識するのです。
人的資産という場合があります。人的資産は、普通ビジネス上、管理上でヒトに関するビジネス的な有用可能性を持つ、保有能力、保有財産として表現されます。資産といっていますが、金銭額で表現できない無形資産としての表現です。人間関係資産と似た意味合いになりますが、人的資産は、個人の顔を中心にしないマスとしての意味合いであるのに対し、人間関係資産は特定の個人、例えば私のもっている個人資産ということで大きな違いがあります。
また、私の専門分野のプロジェクトマネジメントでも一つの重要な管理分野として、人的資源管理(Human Resource Management) という使われ方をします。これはもっと直接的なビジネス面での有用性に絞ったものです。まさにある目的 達成のために割り当てるリソース(資源)として、扱うものとして使用される言葉です。人間関係資産は、もっと広く、しかも特定の人に密着したものになります。