読書感想から(3/3)
3)本書評価とヒント
本書(人生の地獄の乗り越え方」<ムネオを救った30の言葉>(宝島社 2020/1/9 ¥1.300+税))は、いわゆる自伝に類するものである。単なる「私の履歴書」レベルより、きわめて自己主張の強い、選挙民目当てといってもよいものである。ただ、著者自身は、そういう自覚はないだろうし、自分のすべてをぶつけるつもりでまとめたように感じる。
そう感じさせるのは、彼自身の捨て身の(ような)構え方によると思われる。
多くの関連する写真や、他者からのコメントなども混ぜながら、筆者本人の実体験を振り返り、筆者の主張につなげている。
政治家としての彼の生き方、考え方等を、自身の政治家としての浮き沈みを通して表現している。実際に起こったこと、実際に関係した人との付き合いを通して強調している。
ストレートな表現で、筆者の主張が繰り返されているのは、読む前から想像できる通りだ。
ただ、そのストレートな主張は、彼の本音がまっすぐに伝わってくるようで、ある種の爽快感に近いものも感じた。

彼自身が主張する人間関係こそ重要であり、「情こそ命」ということは、参考にすべきことと思う。いろいろな体裁をかなぐり捨てて生の主張をしていることは、人間解釈の原点として参考にしたい。
一方で、政治家らしく、極めて「けれん」を感じる。素の自分をさらけ出すことで、読者を強引に味方につけるという狙いが、何のオブラートもなく表現されていると感じる。
人間関係資産論で取り組む人間関係そのものを、根幹に据え、人とのかかわり方、それに先立つ自身のあり方、考え方をなんのてらいもなく取り上げている。

確かに、人間関係を本当の素の部分に削ぎ落すと、彼の言うような姿勢、考え方、活かし方になるのかも知れない。
人間関係は、主体としての本人(個人)が中心になって、自分の周りとどう関わっていくかということに行きつく。そういう意味でも、個人が主体であり、関係性を気付くことは二次的なものであることを忘れないようにしなければならない。