人間関係資産論に追加する原稿案です。
概説、HURAにはすでに入っていますが、それ以外の既刊書籍には、今回の改訂で反映します。
人間関係の見方についての部分を修正するものです。
(以下原稿案)

ポジティブとネガティブ
人間関係資産論としてまとめるにあたって、今一度人間関係のとらえ方を整理しておきます。
人間関係のとらえ方にふたつの軸があります。
ひとつ目は、「注目する方向」のことで、ネガティブな見方とポジティブな見方があります。心配性な見方と楽観的な見方ともいえます。
同じ人との関わりについても、ネガティブに見るのとポジティブではずいぶん違った気分になります。それによって行動するときは、当然違った行動になってきます。よくいう、ボトルに残った半分の飲料(ウイスキー)をみて、「もう半分しか残っていない」とみるか「まだ半分も残っている」とみるか、といった感覚に近いものです。

人間関係をポジティブにとらえるほうが、いい結果につながる可能性が高くなります。ネガティブにとらえると、次々とその度合いが深くなり、うまくいくこともそうならなくなります。いわゆる負のサイクル(ネガティブ スパイラル)に陥ってしまうのです。その結果、「人間関係に悩む」状況に陥ってしまうのです。人間関係に悩む多くのケースで、自分からポジティブに考え方を切り替えることにより状況を打開できることが少なくありません。
ポジティブに考えても相手がそれに反する言動をしてしまうケースもありますが、そのリスクは考えながらも基本姿勢はポジティブにしたいものです。

感覚的と理性的
二つ目は、「着目する視座」、つまり見る人自身の構え方のことです。感覚的・情緒的な見方と理性的・分析的な見方に分けられます。
多くの人にとって、今までの他の人との直接的な関わりにおいては、感覚的・情緒的な心の動きになることがほとんどです。自分の気持ちに余裕のあるときや、じっくり考えるような状況でないと、理性的・分析的な見方になりにくいものです。ふだんからそういう見方をできる人は、めったにいません。ほとんどの人は意識してそうする場合にだけに、ようやく可能なことなのです。

さらに分析的な見方という場合に、どういう分析をするかによって内容が大きく変わります。その場の自分や相手の感情や感覚を整理する分析をミクロ分析といいます。もっと広い視野、長期的視野を意識した分析をマクロ分析といいます。ミクロ分析とは、相手とのその場分の関係を中心にした整理になります。その結果は対症療法的な対策になります。それに対し、マクロ分析は、より冷静に、広く長い流れで整理することになります。つまり、より、感情や感覚だけでなく、冷静な視点で考えるということになります。対症療法に対して、本質療法といった結果を目指すことになります。

今までの見方を変える
ここで述べた二つの見方を二つの軸としてたてよこに配置したのが、図表5-1です。
今まで我々がとらえてきたほとんどの「人間関係」の位置と、本書を通じて目指している「人間関係」の位置を示しています。

図に示すように、昔から理解し、議論してきた人間関係は、左下の部分がほとんどでした。どうしても、感覚的で情緒的な見方である上に、ネガティブなことが多かったのです。左方向ほど、素の人間、人間本来の感覚といえます。
それに対して、提案する内容は、右上を中心として、各エリアにも必要な場合は多少入るようになります。
特に重要なポイントは、人間関係を感覚・情緒中心のとらえ方でなく、理性的・分析的中心の見方に大きく変えるということなのです。それも、マクロ分析の分野にも立ち入るということです。
もちろん、感覚的・情緒的なとらえ方を否定するものではまったくありません。人間である以上、そこから完全に離れることはできません。
黙っていても感覚的・情緒的になりやすいことをふまえて、今まで意識することが少なかった理性的・分析的なとらえ方を意識的にもっとやっていこうということです。
本能的な感覚だけでなく、冷静な思考や判断を意識的にやっていこうということなのです。単なる生き物でなく、人として与えられた考える能力をもっと活用しようということです。
つまり、矢印で示すように、本書シリーズを通して、(A)から(B)に向かって進化することを提案しました。そう、進化、考えるヒトとしての進化なのです。

現実的には、いずれの軸でも二つの要素は、いずれか一方だけがいいというものではなく、うまく行き来しながらバランスするものです。今までより意識してその比率を大きく変えていくことこそが大切なことなのです。
相互に行き来しながら上向きのスパイラルを駆け上るようになるのです。意識して理性的・分析的に見ようとするだけで、実は感覚的・情緒的な見方そのものの中身も変化してきます。行き来することによって、今までになかった相乗効果が起こるのです。
図表5-1では縦軸、横軸を明確に分けていますが、現実の意識行動としては、理性的・分析的なとらえ方ができるようになると、自ずとポジティブな見方が増えます。
実際上は、ポジティブな見方を増やすように努力するより、理性的・分析的な見方を意識的に増やすことが効果的なのです。